NO GYM NO LIFE

体操に興味を持った人、体操のことをあまりよく知らない人向けのルール解説を主に。気が向いたら大会の感想も書くかも

つり輪のDスコアの算出方法

今回はつり輪のDの出し方について書いていこうと思います。

つり輪は二つのつるされたわっかで演技するあれですね。電車のつり革みたいなやつ。

 

つり輪は種目別に出るような人たちは完全に筋肉ゲーですね。振動系もパワーで押さえつけてる感あります(良い意味で)。

 

全種目やるオールラウンダーだとあまりにも筋肉をつけすぎるとほかの種目に弊害が出てしまうのでオールラウンダーはそこまでつり輪を極めない傾向にある印象です。

 

つり輪は基本的にはパワーを見せる競技です。ただ、ひたすら力業だけやっても面白くないので振動技もやらなければいけません。力が弱い人は振動系でDスコアを稼ぐ手段もありますが、振動系の最高難度はEまでしかなく、そこまで稼げないです。なので力業を頑張ったほうがDスコアは伸びます

 

また、力技だらけにならない対策ルールとして力業を連続でやるには、難度にかかわらず3回まで、また力業をやるにはB難度以上のスイング技を挟まなければならない、という規制があります。例えば

ふり上がり中水平(E)アザリアン(D)→ふり上がり(A)→脚前挙(A)→前ロール(A)→ホンマ十字(D) 逆上がり中水平(F)ふり上がり十字倒立(D)

とやったとします。緑文字が力業です。

力業を全部で6個やっていますが、取れるのは脚前挙迄になります。ホンマ十字以降は力業連続のルールによって認定されません。

 

・特別要求

つり輪の特別要求は以下のようになります。

Ⅰ:振動、振動倒立技

Ⅱ:力業、静止技

Ⅲ:振動からの力静止技

Ⅳ:終末技

 

振動、振動倒立技はクルクルしたり、スイングから倒立になる技

力業は十字懸垂などの力を使って動かない技

振動からの力静止技はスイングから力を使って十字懸垂などになる技

 

のような感じです。

静止技はすべて2秒以上の静止時間が要求されるので一瞬止めるだけじゃ減点されてしまいます。

学生の大会でよく見るのが脚前挙等をなめているのか一瞬止めてそのまま次の技に行っちゃうやつですね。A難度の技をやって0.3引かれるのはあほの極みです。気を付けましょう。

 

あまり説明することが思いつかないので動画を使って解説していこうと思います。


PETROUNIAS Eleftherios (GRE) - 2017 Artistic Worlds, Montréal (CAN) - Qualifications Rings

ペトロ―ニャス選手の演技です。世界のつり輪モンスターの一人です。

演技構成は以下のようになります

技名 難度 グループ
逆上がり上水平 E
逆上がり中水平 F
ふり上がり中水平 E
(ディスロー) A
ほんてん倒立 C
ふり上がり上水平 D
ナカヤマ(背面水平経過十字懸垂) D
ホンマ十字懸垂 D
ジョナサン(屈伸ヤマワキ) D
ふり上がり倒立 C
新月面(抱え込み2回宙返り2回ひねり) E

難度点4.3

特別要求2.0

でDスコアは6.3となります。

ディスローはいつものごとく10技から外れているので点数に入りません。

この演技もしっかりと力業は3連続までになっていますね。

 

跳馬はいったん飛ばして次回は平行棒をやります

 

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あん馬のDスコア算出方法

今回は床に続きあん馬のDスコア算出方法を解説していこうと思います。

あん馬は体操やってない人からしたら地味な種目であんまり面白そうに見えない種目なのかなと思います。最近では開脚旋回系の技が優遇されたりしてかっこよく見える演技が増えてきたのかなと。

地味だけど渋さはあるので見てる分には結構好きです

個人的には現役の頃から苦手で嫌いでした

審判的には慣れてしまえばどうってことはない種目なんですが最初の頃はD審的にはフロップ、コンバインをとるのが難しかったり、E審的には初級者レベルの採点が大変なことになったりでした。

 

・特別要求

あん馬の特別要求は以下のようになります。

Ⅰ:片足技

Ⅱ:旋回技、転向技

Ⅲ:移動、転向移動技

Ⅳ:終末技

 片足技はクルクル回ってないやつ。

旋回技、転向技はその場でクルクル回ってるやつ(ブスナリは移動してるけどここ)。

移動、転向移動技は動きながらクルクルしてるやつ。

こんな感じの認識でいいと思います。

 

基本的には一周で1技って認識で大丈夫ですが、例外があって、それがフロップとコンバインという技です。

 

うまい人たちは基本的に入れている技で一つのポメル(取っ手)上で何周も回ることで難度が上がる技です。細かい解説を入れると 

1ポメル上で旋回と転向技を合計三周することでD難度のDフロップ、4周することでE難度のEフロップになります。ちなみにこれを開脚旋回で行うとそれぞれ難度が1段階上がります。

旋回1周 旋回2周 ロシアン転向(°)
B+B D 180 or 270
D E 360 or 540
E F 720 or 900
F G 1080以上

こんな感じの難度になります。ロシアン転向はうつぶせのままてけてけしてるやつです。説明難しい。

 

旋回倒立の難度アップの仕組みは

倒立に上げる→難度一つアップ

端から端まで移動→難度一つアップ

360°以上ひねる→難度一つアップ

倒立から降ろして旋回→難度一つアップ

という仕組みになっています。なのでブスナリは

逆リアから倒立に挙げてB→C、そこから移動してC→D戻ってきて360°ひねったことになるのでD→E、そこから降ろして旋回でE→F

という仕組みになっています。

 

では実際の演技でDスコアを計算してみましょう。

 


KAMEYAMA Kohei (JPN) - 2017 Artistic Worlds, Montréal (CAN) - Qualifications Pommel Horse

亀山選手の演技です。途中ミスはありますがやはりつま先までとてもきれいで感動します。

この演技の構成は次のようになっています。

技名 難度 グループ
ブスナリ F
セア倒立(リーニン) D
Eフロップ(b, l, l, b) E
Eコンバイン(l, l, r 360°) E
ポメル間ロシアン360° C
マジャール移動 D
シバド移動 D
ロス D
ウゴニアン E
逆リア倒立3/3移動降り D
難度点 4.4  

()の中のb, l, r はそれぞれBシュテクリ、ループ(1ポメル上での旋回)、ロシアン転向になります。

 

上で説明した技がすべて入っていて解説したのを読んでから動画を見るとわかりやすいかと思います。

 

次回は筋肉ゲーつり輪の解説をすると思います

 

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床のDスコアの計算方法

二日続けて記事を書くのを休んでしまいすいません。PCを職場に忘れてしましました。

 

今回はタイトル通り、床のDの採点方法についてです。

個人的に審判をやっているときDをとるのが一番大変なのがこの種目です。

なぜかというと結構初心者からでも10技詰め込んできたりうまい人であれば加点を考慮したりしなければならないからですね。

 

ところで今更ですが公式の採点規則をいかに張っておきます。

http://www.fig-gymnastics.com/publicdir/rules/files/en_MAG%20CoP%202017%20-%202020.pdf

 

日本語版はお金を体操協会に払って買うしかないですが英語が読める方は上のリンクからで十分ですね。

www.jpn-gym.or.jp

一応採点規則が欲しいという方向けにリンクを張っておきますね

 

さて、床のDの解説を始めたいと思います。

・床の特別要求

Ⅰ:跳躍技以外の技

Ⅱ:前方系の跳躍技

Ⅲ:後方系の跳躍技

Ⅳ:終末技

となっています。

Ⅰは倒立や旋回技や力業

Ⅱは前宙やシライ2など前向きに回る技

Ⅲはバク転やシライ/グエンなど後ろ向きに回る技

Ⅳの終末技は床の場合特殊でグループⅡとⅢで代用することになります。

 

細かいのであまりルールに詳しくない人は飛ばすことを推奨

グループ要求を埋めるために例えば終末技を後方三回ひねりにしたとします。

演技中に行ったグループⅢの技が終末技の後方三回ひねりだけだったとします。

この場合、終末技のグループが優先され後方三回ひねりはグループⅢではなく、グループⅣとなります。

この場合に起きる問題としてグループⅢが演技中に行っていないことになりグループⅢの特別要求を埋められないことになり、0.5点もらえなくなります。

なので床で演技構成を作るときに注意しないといけない点になります。

 

・加点について

現行の一般ルールだと床と鉄棒にだけDスコアに加点があります。

簡単に言うと難しい技を連続で行った場合プラスアルファで点数をもらえるといった感じです。

どのくらいもらえるかというと

(D難度以上の跳躍技)+(D難度以上の跳躍技):0.2

(D難度以上の跳躍技)+(B,C難度の跳躍技)   :0.1

といった具合です。

この加点をもらえるのは一つの演技に二箇所までなので最大で0.4点もらえます

 

ルール改正は前サイクルの一番うまい人を殺しにかかる傾向があるので白井健三君の演技を殺すために加点の箇所に制限を付けたのだと邪推

 

3連続でやって一気に二個加点をもらってもいいし二連続を二回やって二個加点をもらうのも自由です。

ここで実際の演技で解説していきましょうか。


SHIRAI Kenzo (JPN) - 2017 Artistic Worlds, Montréal (CAN) - Qualifications Floor Exercise

今となっては超有名人白井健三君の演技です。

演技構成は以下のようになっています。最後の括弧は(グループ・難度)

シライ3(伸身リジョンソン)(Ⅲ・H)

リジョンソン(後方二回宙返り三回ひねり)(Ⅲ・G)

後方2回半ひねり(Ⅲ・D)~前方2回半ひねり(Ⅱ・E)

前方抱え込み一回ひねり(Ⅱ・B)~シライ2(前方三回ひねり)(Ⅱ・F)

閉脚エンドーロール(前転して倒立になるやつ)(Ⅰ・C)

後方三回半ひねり(Ⅲ・E) ~ 前方伸身一回ひねり(Ⅱ・C)

シライ/グエン(後方伸身4回ひねり)(Ⅳ(Ⅲ)・F)

 

グループ要求:2.0

難度点:4.9

加点:0.3

Dスコアが7.2となります。やばいですね。

赤字の部分が加点に使われた箇所になります。

青字の部分は加点は二箇所までという規制に引っ掛かり加点は得られません。

 

バク転はグループ5技規制、または全体の10技規制により難度が低いので技数に入らないというわけです。

 

今日はこんな感じで終わりたいと思います。

 

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Dスコアの計算方法

前回で種目ごとのルール解説とか言ったけどやっぱりDスコアの算出方法の概要を書いとかなきゃいけない気がしたので今回はそっちを書いていきます

Dスコアとは前回解説したように技の難度点の合計点です。

 

・技の難度

体操男子の技は2018年現在でA~I難度まで存在しています。

Aが一番簡単な技でバク転とか大車輪でI難度が2018現在唯一のミヤチ(バーを越えて伸身二回宙返り二回ひねり懸垂)


The Miyachi - 2017 Artistic Gymnastics World Championships - MAG new HB element

 これは人間技じゃないですね。やばい(小並感)。これ1技でバク転9個分ですからね。

 

A~Iまでの技にそれぞれ0.1~0.9点が振られています。なので当然難しい技をやるほうがたくさん点数をもらえますね。

 

ただし、100個A難度をやってDスコアを10点もらおう!ていうのはできません。

 

というのは、男子では跳馬以外の種目で10個目の技までしか点数としてカウントしてくれません(正確に言うと1つの終末技+9つの中技)。

 

・グループ要求

ここでグループ要求というものについて解説していきます。

似たような技ばかりやることを防ぐためのルールとしてグループ要求というものがあります。

 グループ要求はⅠ~Ⅳまであります。

具体的に鉄棒で例えると

Ⅰ:大車輪系 Ⅱ:離れ技 Ⅲ:バーに近い技 Ⅳ:降り技

 

 のようになります。これを一つ埋めるたびに0.5点ずつもらえます(降り技に関しては細かいことがあるのでそれはまた今度)。

 

・Dスコアの算出

 上の二つの技の難度点、グループ要求点を合計したものがDスコアとなります。

計算式として

Dスコア=(グループ要求を埋めた数)×0.5+(やった技の難度点の合計)+(加点)

となります(加点については床と鉄棒にしかないので床と鉄棒の回でやります)。

 


LARDUET Manrique (CUB) - 2017 Artistic Worlds, Montréal (CAN) - Qualifications Horizontal Bar

Dスコア算出の例として上の動画でやってみます

技の名前(グループ 難度)のように書いていきます

伸身モズニク(Ⅱ E)

アドラーハーフ(Ⅲ D)

伸身トカチェフ(Ⅱ D) ~ モズニク(Ⅱ D)

アドラー一回ひねり片逆手(Ⅲ D)

ヤマワキ(Ⅱ D)

シュタルダー一回半ひねり片大逆手(Ⅲ D)

ツォリミン(Ⅰ C)

ホップターン(Ⅰ C)

フェドルチェンコ(Ⅳ F)

 

(グループ要求4つ)×0.5+4.1 +加点0.2= 6.3 

となります。

なんで大車輪とかはいってないの?と思うかもしれませんが技が10個を超えた場合、難度の低いものからカウントされなくなるわけです。

 

今回は長くなってしまいましたがこの辺にしておきます。

質問等あればどんどんコメントお願いします!!!

 

 

体操競技(器械体操)のルール解説(ルールを知らない人~体操初心者向け)

前回の記事では審判員の解説というかなり斜め上な記事を書いてみたんですがあんまりそういうのもないと思うのでこれはこれでありかな、と。

 

今回は体操競技のルールそのものの解説をしていきたいと思います

 

まず、体操競技のルールは採点方式です。10年以上前に体操を見ていた方だと森末さんやコマネチの10点満点が記憶にあったりすると思いますがいまでは満点、という意味での10点はありません。

 

オリンピックごとに大規模なルール改正が行われるのですが今の2017年版採点規則では

 

技の難度点:Dスコア(Difficulty score)

技のきれいさ:Eスコア(Execution score)

 

の2つの点数の合計点で得点は決定されます。

Dスコアはシライとかミヤチとかムーンサルトとか難しい技をたくさんやるとそれだけ点数が増えていきます。

 

一方、Eスコアは10点満点からスタートです。空中で膝が曲がっていたり着地が動いてしまった場合に10点から点数が引かれていきます。

 

だからたとえDスコアが高くてもものすごく汚くやってしまうと点数は伸びないわけですね。

 

白井健三君の床なんかは例外でDスコアが本当に頭一つとびぬけているので多少周りよりEスコアが低くなっても勝てるわけですね。

ですが普通の人間にはあんな化け物Dスコアは無理なので基本は自分のできる8割くらいのDスコアに抑えてEスコアを高くするわけです。

 

今回は体操競技のルールの基礎の基礎を書いていきましたが次回は種目ごとのルール解説をしていこうかと思っています。

体操競技ブログ開設!

こんにちは

afm_gymです。体操競技のブログを始めてみようと思います

今の予定だとどの選手が好き!とか大会の感想を言っていくブログというより演技の点数がどのように減点されてたり技がとられているのかを解説していくブログにしようと思っています

 

まずは自己紹介と審判員についての解説

自分は日本体操協会公認審判資格1種を持った審判です。まず体操をやったことない人からすると審判って何してんの?ってなると思うので今回はまず審判について書いていこうと思います。

 

まず体操競技における審判は大きく分けると

技の難しさの審判:D審判

技のきれいさの審判:E審判

の2つがあります(D:Difficulty, E:Execution)。

全日本レベルになるとそれぞれ分かれてD審判2人、E審判4人で行ったりしますが、県大会レベルだとDとE両方かねて合計2人とか4人でやることもざらです。

 

審判資格は男子だと

3種2種1種国際

の4種類あります。国際は文字通り国際大会の審判ができる資格です。

国内だと1種が一番偉く、これを持っていると国内で行われるどんな大会でも審判できる資格があるということになります。

さらにその一種の中にカテゴリーというものがあり、1,2,3の3つあります。

これも1が一番偉く、国際大会の代表選考会で主任審判をできるというかなり偉い審判資格になります。

 

残念ながら自分はカテゴリーは3の普通の審判員なので全国レベルは主任審判をしたことはありません。

それでも年間30試合近く公式戦の審判をしているのでそれなりに経験はあるので知識はそこそこあります。

 

初めての記事は審判員そのものの解説となりましたが次回はルールについて書いていこうと思っております。

いずれはどっかから動画を拾ってきてどの技でどんな減点をしているかを解説していこうと思っているのでぜひ読んでくれたらと思ってます。