NO GYM NO LIFE

体操に興味を持った人、体操のことをあまりよく知らない人向けのルール解説を主に。気が向いたら大会の感想も書くかも

世界体操2018 全体の感想

ただの感想ブログですいません。明日は採点上げます。

 

村上茉愛選手すごかったですね。まさかの個人総合銀メダル。おめでとうございますの一言です。

 

男子も素晴らしい演技だったとは思います。ただ確実に個人総合、団体ともに中国、ロシアに実力負けしていたと自分は感じました。まあ何目線だよって感じですけど。

 

日本はミスしたとはいえ中国ロシアもミスはしていたのでミスは関係ないですね。

 

私見ですが内村選手が床と跳馬に出ていれば金メダル争いに入れてたと思います。

 

 

団体メンバーに関しても本来であれば野々村選手、加藤選手あたりが入ってその下の世代を引っ張るべきだと思うんですがいまだに内村選手が引っ張る形になっているのが敗因の一つではあると思います。

 

内村選手のおかげで世界の体操のレベルは上がりました。しかし日本は内村選手に頼りすぎていた、そんなことを感じた世界選手権でした。

 

 

さて、審判っぽい視点の話をしましょう。

なぜ日本はきれいに見えるのにあんなにEスコアが出ないのでしょう?

特に、内村選手。姿勢欠点はないに等しいのに鉄棒のEスコアも8点ぼちぼちくらいしかでてないです。

 

これは2017年から変わったルールに起因しています。2017年から角度減点、着地減点がものすごく厳しくなりました。後は鉄棒のコバチ系のキャッチのところの減点もですね。

内村選手は床と鉄棒が得意ですがその二つが特に採点が厳しくなり点数が出づらくなってしまいました。

 

内村選手は姿勢欠点はほぼないです。しかしホップターンであったりアドハ―、アド1の減点が全部0.3以上引かれることがほとんどです。

 

内村選手の鉄棒の演技にひねり技は全部で4つ入っています。そのすべてで0.3ずつ惹かれたらEスコアは実質8.8スタートになり離れ業のキャッチ時の肘曲がり減点なども含め結局今くらいの点数になってしまいます。

 

日本の体操は美しい、と言われていましたがそれだけではダメな時代がついに訪れました。美しくかつ技を完璧にやらないとダメな時代です。

 

このルールの時代は個人的にはあんま面白くないと思いますがFIGが決めたルールなので仕方ないです。

 

自分は今後の日本体操を楽しみにしながら審判やってることにします

 

世界体操2018 男子団体決勝 感想だけ

世界体操男子団体は銅メダルでしたね。日本人的には残念でしたけど見てた感じ普通に実力負けした感じに見えました。

 

確か日本のミスは田中選手の平行棒の落下と床の谷川選手の転倒の2ミス。対する中国も床とあん馬で2ミス。

 

普通に実力が中国ロシアに負けてたっていう印象でした。

 

中国は雛敬園の平行棒がやばくて16.2とかいう現行ルールでは考えられない点数をたたき出してました。Dスコアも過去最高難度なのに対して実施も減点箇所がアームマク―ツの一瞬の静止、ヒーリー系のキャッチするときの腰曲がり、着地くらいしか見当たらなくて完璧な実施でした。

 

たらればの話をしちゃうと内村さんが全種目出てノーミスならもしかしたら金取れてたかもしれないですね。

 

今回の団体決勝の採点に関しては良くも悪くも採点規則通りの採点って感じでした。

 

以前に比べると謎の点数とか疑惑の採点はなかったと思うのでその点に関してはすごい良い大会だったと思います。

 

世界体操2018予選 内村航平選手 鉄棒の演技

せっかく世界体操やってるので内村選手の鉄棒を採点してみようと思います

結果は

D:6.4、E:8.2 決定点14.6点で暫定一位でさすがキングって感じです

 


2018Doha QF HB Kohei Uchimura

技名 グループ 難度
屈伸コバチ E
カッシーナ G
コールマン E
シュタルダー一回半ひねり片大逆手 D
アドラー一回ひねり両逆手 E
ヤマワキ D
エンドー B
アドラーハーフ D
ホップターン C
伸身二回宙返り二回ひねり E

1G 、4E、3D、1C、1Bで技の価値点が4.4、グループ要求はすべて埋まっているので2.0.よってDスコアは6.4になります。

 

Eスコアの解説に移りたいと思います。

1技目:屈伸コバチ

キャッチの際の肘曲げと車輪を回すときの肘曲げで0.1×2

 

二技目:カッシーナ

キャッチの際の肘曲げで0.1

 

3技目:コールマン

キャッチの際の肘曲げで0.1

 

4技目:シュタルダー一回半ひねり片大逆手

ひねり終わりの角度減点で0.3

 

5技目:アドラー一回ひねり

肘曲がり、力を少し使ったので0.1×2

 

6技目:ヤマワキ

腰の曲がりと高さで0.1ずつ

 

7技目:エンドー

減点無し

 

8技目:アドラーハーフ

角度減点で0.3

 

9技目:ホップターン

角度減点で0.3

 

10技目:伸身新月

着地で0.1

 

以上で減点の合計が1.8でEスコアは8.2となります。

 

動画の角度が良くないのでちょっと不安ですがこんなもんだと思います。

 

姿勢減点がないのはさすが内村さんですね。格が違う。

 

個人的には今年の団体金メダルはどうかなーと思ってますが日本をまったり応援しながら世界選手権は見ていこうと思ってます

 

あん馬のEスコア採点解説

長らく更新しなくて申し訳ございませんでした。

これからはもう少しがんばります(多分)。

 

 

さて、あん馬のEスコアですがそれなりのレベルになればそんなに難しくないです。初心者の演技はごちゃごちゃなっちゃう分たいへんですが。

 

あん馬の減点箇所は大雑把に言うと

姿勢欠点(膝、腰、ひじの曲がりなど)

片足技の技術不足(片足技:くるくる回らない技)

力を使ってしまう

停止、落下

大体こんなところだとおもいます。

 

理想のあん馬の演技とは止まることなくつま先まできれい流れるような演技です。

だから力を使ったり演技が止まってしまうと減点になってしまうわけです。


WHITLOCK Max (GBR) - 2017 Artistic Worlds, Montréal (CAN) - Qualifications Pommel Horse

きれいさ、「うまさ」だけで言ったらこの選手よりもうまい人はうますが、今の時代のあん馬No,1の選手です。

点数は

Dスコア:6.8

Eスコア:8.5

決定点:15.30

難度は言うことないくらい素晴らしいです。完成度ももちろん高いのですがところどころあんまりよくないところが目立ちます。そのあたりは中国のトップ選手のほうが上かなと個人的には思います。

減点箇所の解説です。

1技目 バックセア倒立【D難度】

若干の停滞:0.1

 

2技目 Eコンバイン(ループ、ループ、ロシアン360°)【E難度】

ロシアン転向での上下運動:0.1

 

3技目 Eフロップ(ループ、ループ、シュテクリB、ループ)【E難度】

減点無し

 

4技目 ブスナリ【F難度】

 ブスナリが終わった後の旋回で力を使ってしまっている×2:0.2

 

5技目 シュピンデル【D難度】

腰曲がり:0.1

 

6技目 開脚マジャール移動【E難度】

減点無し

 

7技目 開脚シバド移動【E難度】

旋回の向きの減点3部分ずつ:0.3、0.3、0.1

 

8技目 ウゴニアン【E難度】

減点無し

 

9技目 ロシアン転向1080°【D難度】

上下運動×3:0.3

 

10技目 ループから倒立3/3移動、360°ひねり降り【E難度】

減点無し

 

完璧な旋回姿勢というわけではないですが一つ一つの技の完成度が非常に高くEスコアも高くなっています。

 

今回のポイントは移動系の減点とロシアン等の減点についてです。

 

まず、あん馬は5個の場所に分けることができます。

f:id:afm_gym:20181023175441p:plain

上の図はあん馬を上から見たものです。ルール上、ポメル二つと三つの部分に分かれています。

前移動などの技は①~③まですべて使う技ですが、そのすべての箇所でそれぞれ減点されます。今回の場合で言うと開脚シバドの時に旋回の角度が悪かったからそこが原点なのですが、①~③でそれぞれ角度が悪かったので3回減点を食らうわけです。

 

ロシアン等の技は同じ技を3回繰り返す技になりますが、これもそれぞれの技で減点されることになります。今回だと三周とも上下に動いていたので3回減点されたわけです。

 

長くなりましたが今回はこんなところで。

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床、一般のEスコア解説~初級編~

今回は床のEスコアと全体に共通しているEスコアについての解説です。

 

体操をテレビで見ててなんでこんな低いの?!みたいに思うことが多々あると思いますがその原因はどこで減点されるかわからないことからきていると思います。

なので今回はざっくりと全体的なEスコアの話を絡めながらやっていこうとおもいます

 

まず体操のEスコアは10点からの減点方式で点数が決定されます。

 

ぶっちゃけEスコアには正解はないです。見る人、見る角度によって膝、つま先、腰の曲がり具合などが違って見えてくるからです。

 

そのため、公式戦ではE審判は5人用意され、点数を一番高くつけた人の点数一番低くつけた人の点数をカットして残りの三人の点数の平均が最終的なEスコアになります。

だから例えば5人の審判がそれぞれ

8.6、8.3、9.08.0、8.2

と点数を出したとします。この場合、一番高い点数が9.0、一番低い点数が8.0なのでその二人の点数をなくして残りの三つの点数を足して3で割ります。

なのでこの場合のEスコアは8.366となります。割り切れない場合は切り捨てです。

 

だからテレビなどで表示されている点数は審判が話し合ってこの点数にしているわけではなく機械的に足し算割り算をしているだけですね。

 

実際どういうところで減点されるのかというと、いっぱい減点項目はあるんですがざっくりいうと汚かったら減点されます。

採点規則の第9章に

「選手は、安全が保証され、美的に洗練され、かつ技術的に習熟していることが求められる」

という一文があります。

これは何て言っているのかというとようは完璧な技以外やるなってことですね。この一文はある一定層の選手たちに捧げたい。

 

なので完璧な技以外は減点されていきます。

完璧でない要素として

伸ばさなければいけない場面でつま先、膝、腰、肘が曲がっている、着地が止まらない、倒立が止まらない、転ぶ、器具から落下する

などがあります。

その失敗具合に対して

小欠点:0.1、中欠点:0.3、大欠点:0.5、転倒、落下:1.0

の減点がなされていくわけです。着地で小さく動いたら0.1、大きく動いたら0.3減点的な。

 

まあ言葉でうだうだ書き連ねてもよくわからないと思うので映像で解説していきます。


Sam Mikulak – Floor Exercise – 2018 U.S. Gymnastics Championships – Senior Men Day 2

 

アメリカのミクラック選手の床の演技。

この選手は割と丁寧な実施をするので個人的にはすごい好き。

点数は

Dスコア:5.7

Eスコア:8.65

決定点:14.35

 

アメリカの採点は割と甘い印象があるんで自分が採点したらこれより少し厳しくなっちゃいました。

さて、技ごとに解説していきます。あくまで自分の採点なのでこの時の審判の先生と完全に減点箇所が一致しているわけではないので参考程度で。

 

一節目:後方二回半ひねり~前方二回宙返り(D難度+D難度、0.2の加点)

一つ目の後方二回半ひねりは特に減点なし

二つ目の前方二回宙返りは0.5の減点

膝がくっついていない(脚割れ):0.1

つま先が伸びていない:0.1

着地で大きく一歩動いた:0.3

 

二節目:前方二回ひねり~前方抱え込み一回ひねり(D難度+B難度、0.1の加点)

一つ目の前方二回ひねりは減点なし

二つ目の前方抱え込み一回ひねりは0.2の減点

抱え込み姿勢が不明瞭:0.1

着地で小さく一歩:0.1

 

クロバット以外の技:シュピンデルゴゴラーゼ、ゴゴラーゼ(D難度、C難度)

ダンサーがやってそうな技のやつです

このふたつに関しては特に減点はなし。

グループⅠのアクロバット以外の技で減点されるときっていうのは姿勢減点、静止時間不足くらいかなと。宙返り系に比べて減点は甘くなってる印象

 

三節目:後方一回半ひねり~前方伸身一回ひねり(C難度~C難度)

一つ目の後方一回半は特に減点無し

二つ目の前方伸身一回ひねりは0.4の減点

宙返りの高さ不足:0.3

膝の曲がり:0.1

 

四節目:後方二回ひねり

0.1の減点

空中姿勢:0.1

 

最終節:後方三回ひねり

0.4の減点

着地で大きく一歩:0.3

着地時の腰とり:0.1

 

上記の減点を合計して1.6の減点

10点から引いて8.4となりました

 

0.25違うのはまあ誤差です。

 

床は今のルールだと着地をいかに止めるかなんで着地を止めれば高いEスコアはでるのかなって感じです。

 

長くなりましたがこんな感じで終わります

 

 

 

 

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鉄棒のDスコア算出方法

長らく更新が開いてしまいました。

死ぬほど忙しかったです

 

さて、今回は男子体操の花形鉄棒です

 

世界のウチムラの得意種目、男子最高難度Iのミヤチと日本の得意種目ですね

 

さて、鉄棒の技を大雑把に分けると

大車輪、大車輪しながらひねる技

ホップターン、ツイスト、etc....

 

鉄棒から手を放して宙返りしてまたつかむ技

コバチ、カッシーナ、ミヤチ、etc....

 

屈伸したりしてバーに近づいて行う技

エンドー、アドラー、etc...

 

降り技

伸身新月面、ムーンサルト、etc....

 

大体こんな感じです。

2017ルールからひねり技の減点が厳しくなり、離れ業を5個やれるようになったので鉄棒のトップ選手たちは離れ5個、アドハ―、アド1、ホップみたいな演技が多くなった印象です。

 

・グループ要求

Ⅰ:懸垂振動技

Ⅱ:手放し技

Ⅲ:バーに近い技・アドラー系の技

Ⅳ:終末技

 

早速演技を見ていこうと思います


SHIRAI Kenzo (JPN) - 2017 Artistic Worlds, Montréal (CAN) - Qualifications Horizontal Bar

白井健三選手の鉄棒です

アドラーからのポゴレロフっていうなかなか面白い技をやってるのが個人的に高評価です。

さて、技構成は次のようになります

技名 難度 グループ
ヤマワキ D
エンドー移行 B
車輪 A
屈伸コバチ(落下により不認定)    
ツイスト A
逆車輪 A
アドラー C
ポゴレロフ(大逆手から伸身イェーガー一回ひねり) F
け上がり A
移行 A
シュタルダー B
コバチ D
ホップターン C
アドラーハーフ D
シュタルダー一回ひねり C
伸身二回宙返り二回ひねり E

 

A難度の技は10技オーバーで全部消えます。

屈伸コバチで落下があったのでそこだけ不認定になります。

2B、3C、3D、1E、1Fで難度点が3.6、特別要求分で2.0

なのでDスコアは5.6になります

 

 

次からはEスコアの解説もちょこちょこ入れていこうと思います。

 

平行棒Dスコア算出方法

今回は平行棒です

 

平行棒は二本の棒の間で倒立したりクルクルしたりする技です。

 

平行棒は一つ一つの技で止まってくれるので比較的採点は楽なほうですね

 

また、現行ルールだと一番Eスコアが高くできる種目であると個人的には思っています。だから中国なんかはこの種目を極めているのかなと。

 

平行棒の技は大雑把に分けると

 

棒の上で宙返りする技

倒立に収まる技

宙返りしながら降りる技

 

大体この三つに分かれると思います。ほとんどすべての技が倒立からはじまるので倒立の美しい選手の平行棒は見ていてとてもきれいに見えます。

 

・特別要求

Ⅰ:両棒での支持技

Ⅱ:腕支持振動技

Ⅲ:長懸垂・逆懸垂技

Ⅳ:終末技

 

Ⅰは大体倒立からひねったり宙返りする技。

Ⅱは二の腕も使った技

Ⅲは平行棒にぶら下がって行う技

Ⅳは宙返りしながら平行棒から降りる技

 

ざっとこんな感じです。

 

早速動画でやっていきましょう


WILSON Nile (GBR) - 2017 Artistic Worlds, Montréal (CAN) - Qualifications Parallel Bars

 

イギリスのナイル選手の演技になります。

ちょっとひっかけ要素もあるんですがよくわからない人はスルーしてください

 

 

演技構成は以下になります

技名 難度 グループ
ピンコ A
ホンマ(後ろふり上がり屈伸宙返り支持) D
倒立 A
棒下倒立ひねり E
シャルロ(棒下単棒倒立) D
タジェダ(棒下宙返り後宙返り腕支持) E
(移行) A
バブサー(ティッペルト懸垂) E
(前ふり上がり) A
(移行) A
ティッペルト(倒立から伸膝で振り下ろし懸垂前ふり上がり開脚抜き倒立) D
ヒーリー(倒立から片腕支持一回ひねり支持) D
(前ふり上がり) A
前方二回宙返り降り E

いつものように括弧の技は10技よりも多くなってしまったのでカットした技です

 

難度点は4つのE、4つのD、2つのAで3.8点

特別要求はすべて埋まっているので2.0点

よってDスコアは5.8点ということになります

 

ここでひっかけ要素なんですが、シャルロは数年前まで?前サイクルまではE難度でした。

今も特定の条件を満たせば一つ難度が格上げになります。

シャルロに限らず単棒で倒立になる技全般共通なのですが、単棒からのヒーリー系の技につなぐことで一つ難度が上がります。

まあほかの種目で言う加点見たいな感じです

 

今回は以上になります。

次回は体操の花形、鉄棒です。